はるちゃんのお産

『はるちゃんのお産』

はるちゃんは3じゅう○才、初産婦さん。世間ではマル高と呼ばれる妊婦さんです。
看護師さんでもあります。
自分らしいお産をすることを強く希望していたはるちゃんは、助産院でのお産を選び、
ご主人ははるちゃんの考えを尊重してくれ、助産院にやって来ました。
初めて診察をさせていただいたのが妊娠22週、一般的な妊婦さんはつわりも終わっている時期です。
が、はるちゃんはまだまだ充分に食べる事が出来ず、お手製のジュースを片手にした状態で診察させて頂きました。
赤ちゃんは順調。
でも、酷いつわりがようやく落ち着いた頃 糖尿病の検査をしてグレーゾーン。
お手製のジュースの効果か?尿糖も出ていました。
『このままだと病院が貴女を待っている』という一言が効いたのか?その後の尿糖はマイナス。
と、安心するのもつかの間。今度は、パンパンにお腹が一日中、張っています。
それをホメオパシーで乗り切りながら、でも、安静の日々。




助産婦としては、『高年初産なんだから、動いてもらいたい・・・でも、動いたら破水しそう!』
て゛、はるちゃんを見るたびに憂鬱になりました。でも、そんな事、言ってられません。
37週に入るまではゴロゴロしていただく事にしました。
いよいよ、念願の37週。いきなり、動いて筋肉が破綻しないように、
そして、やっぱり、破水しないように、徐々に調整していただきました。
散歩もかなり、スムースになった頃、はるちゃんはおしるしがありました。
そして、予定日の前日午前2時45分陣痛が始まりました。
4時25分になり助産院に連絡が入り、ご主人は2・3日分の自分用の元気ドリンクを持って
6時すぎ、助産院に着きました。助産院に着いたときには2〜3分おきに陣痛があり 子宮口も5センチ開いていました。結構、進みが良いぞっと感じた私はサポーターを呼び出し 8時前に助産師3名(ちなみに20年からのベテラン揃い)助産学生1名が揃いました。
助産師が揃う前の7時23分パーーーン!という音響の元、自然に破水しました。
流れてきた羊水は無色透明、赤ちゃんの心音も130回前後。落ちる事も無くしっかり打っています。
さぁ、ここからがはるちゃんの頑張りどころ。『ううーーーっ、力が入るぅぅぅぅぅーー。』という言葉を尻目に
『今から気張っていたら産道が傷だらけになるから赤ちゃんにはゆっくり降りてきてもらいましょう』と、
逃しの呼吸をしていただきました、このときの、ご主人のリードが非常に巧で上手い!!
信頼できるご主人の言う事は一言も漏れなくはるちゃんはしっかり聞いて実行。
そして、ベテラン揃いの助産師の誘導もまた、絶妙なバランス。その場に居ないと中々理解できませんが、、、、。

周りの期待にこたえて、赤ちゃんは赤ちゃんのぺースで確実に降りてきてくださいました。
そして、赤ちゃんがちょっと見え初めて、少し、力を入れてみました。でも、ゆっくり、ゆっくり。
慌てないで、ゆっくり、ゆっくり・・・はるちゃんはゆっくり、力を入れました。
赤ちゃんの心音は、それに答えるように元気に打っています。
そして、上手に力を入れたり逃したりしているうちに とうとう、赤ちゃんの頭はもう、引っ込まなくなりました。
ここからは、気張れません、どんなに気張りたくても大きな呼吸を繰り返しながら気張りを逃します。
はるちゃんは周りの声を聞きながら、ご主人の誘導と助産師の助言に最大限に答えました。
そして、赤ちゃんの頭は自分の力で1回の陣痛に1ミリ単位でゆっくり、ゆっくり、出てきます。
はるちゃんを傷つけないように、赤ちゃん自身も負担が掛からないように、ゆっくり、ゆっくり。
3回目くらいの陣痛でおでこまで生まれてきました。
ここは、さらにゆっくり。一番大きな部分の誕生ですから。
はるちゃんは、ご主人やサポート助産師に合わせて『ふぁ〜あ〜、ふぁ〜あ〜』と呼吸をしました。
はるちゃんの呼吸に合わせておでこが出て、お目目が出て、お鼻、お口とゆっくり、誕生。
そして、、、
『うわぁー、頭が生まれたよぉー!』と、サポーター助産師の声。
ここで、赤ちゃんも一休み。
はるちゃんは横向きの姿勢から仰向けに移動して、後からご主人に支えていただきました。
赤ちゃんの顔は綺麗なピンク色です。
次の陣痛で、赤ちゃんは顔の向きを換え 肩が出やすいようにクルリと回りました。
同時にはるちゃんのお尻よりに身体を傾け、次にははるちゃんのお腹側に身体を傾けました。
そうしてると赤ちゃんの身体は自分から半分出て来ました。
その時、サポーターの助産師が
『ほらっ、赤ちゃんがそこまで来てるよぉーっ』と声を掛けると
はるちゃんは赤ちゃんに手を伸ばしてにこにこと笑いながら、赤ちゃんを抱き上げました。
満面の笑みは本当に綺麗で何者にも換えがたいものでした。今でも、私の頭にこびりついています。
後日、はるちゃんに『あの時、なんであんなにニコニコできたの?』と、聞いたら
『やっと、赤ちゃんに会えたぁー!と思ったら自然に手が出て抱ける事が嬉しかった。』と話してくれました。




はるちゃんのお産は本当に順調で時間も掛からないお産でした。
でも、時間が掛からないお産が良いお産ではありません。
時間が掛かるお産には理由があるものです。
誰もがみんな、納得の行くお産をして子育てに前向きになれるお産であって欲しいと いつもいつも、考えています。
時間が掛かるお産も掛からないお産も、その理由を考えながら
赤ちゃんが元気に生まれてくれることを見守りながら
赤ちゃんのペースを乱さないように、
赤ちゃんの周りの方々が幸せで居られますよう、助産したいと日々、考えています。